横矢真理さんと考える「子供の防犯」(その2)
セコムの舟生です。今回は、前回に引き続き、“子どもの危険回避研究所”所長、横矢真理さんとの対談をお届けします。
「臨機応変に対応できる力を育むことが大切」という話題からレポートを再開します。
舟生:臨機応変に対応できる力というのをもう少し、詳しく教えてください。
横矢さん:では、事例をあげてみますね。たとえば、自宅に子供をひとりで留守番させるケースで考えてみましょう。子供がひとりでいることを訪問者に気付かれないように、居留守をさせているご家庭が多くあるようです。一見すると、安全な対応に思えるかもしれません。でも訪問者が空き巣目的だったとしたら、子供は犯罪者と無防備な状態で遭遇することになりかねません。
舟生:たしかに、留守だとわかれば、空き巣に入られるかもしれませんね。
横矢さん:こういう場面では、臨機応変に対応できるかどうかが試されます。「お母さんは、今、手が離せません」とか「電話中です」と答えるなど、子供がドア先で応対しているけれど、家の中には大人がいるのだと訪問者に思わせることが大切です。絶対ドアを開けないことも重要です。
舟生:もし訪問者が悪いことをしようとしているなら、巧みな質問をしてきそうですね。
横矢さん:その通りです。犯罪者は本当に言葉が巧みです。事前にたくさんの答えを用意し、シミュレーションを行っておくことが重要だと思います。
舟生:何事も、練習が大切ということですね。防犯ブザーを携帯するときもそうですよね。
横矢さん:ただ持っていればいいということではありません。どのような場面で、どのように使うか、親子できちんと話し合い、練習することがとても大切です。
舟生:防犯ブザーには、さまざまなタイプのものがありますから、使い方をきちんと知っておく必要がありますね。防犯の知識は教えるというより、一緒に学ぶという姿勢が大事ですね。
臨機応変にというとちょっと難しいかなと考えがちですが、子供の吸収力はすごいですからね。
横矢さん:子供たちのほうがしっかりしているケースは多いですよ。親たちも負けていてはいられませんね。子供の視点に立って一緒に考えながら教えていけば、子供たちは必ず理解し、成長します。どんなに歩みが遅くとも、着実に成長します。コツコツと練習し、危険に対応する力を付けていきたいですね。そうそう、子供たちがどれくらい防犯について知識を持っているかを確かめるいい“呪文”があるんですよ。
舟生:“呪文”ですか?
横矢さん:ええ。子供たちがどれくらいのレベルにあるのかがすぐにわかります。親たちは、子供に“教わる”という姿勢でいればいいのです。一言だけ「教えてね」と言うだけで、子供たちは、学校で教わったことや、知らず知らずに身に付けた知識を披露してくれます。もしかしたら、体験談も聞き出せるかもしれません。親子でのコミュニケーションの一環にもなるので、一度、試してみるといいかもしれませんね。私は子供たち相手に話をする場合は、「おとうさんやおかあさんは、今お話したことを知らないかもしれないから、おうちに帰ったら教えてあげてね」と話しています。
舟生:横矢さんは、ご自分のお子さんたちとどのようなコミュニケーションをとってきたのですか?
横矢さん:疑問や不安に思うことがあったら、一緒に対策を探したり考えたりしてきました。子供たちはもう大きくなりましたが、コミュニケーションは今でも、取っていますよ。私が講演に出かけていたり、いろいろな活動に参加しているので、なかなか時間を共有できないのですが、最近は高校一年の次男とエレキギターを一緒に弾いています。
舟生:それは、いいですね。私の子供はまだ幼いので、まだなかなか一緒に趣味を楽しむといったことはできませんが、休日はいつも一緒に公園に散歩に行ったり買い物にいったりしています。親子で時間を共有することは、防犯という観点からではなくても、大切ですし、何より楽しい時間ですよね。これからも、子供たちとの時間を大切にしていこうと思います。
本日はお忙しいところ、貴重なお話をいただきましてありがとうございました。これからも子供たちの明るい未来のために、ぜひ一緒に子供の防犯について考えていきましょう。
2回にわたってお送りしてきた、横矢真理さんとの対談はいかがでしたでしょうか? 対談の中で、横矢さんは「子供たちが被害に遭うなんて許せない!」と、強くおっしゃっていました。横矢さんの強い意志を私も見習いたいと思います。みなさんはどのように感じられましたか?
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■横矢真理さん プロフィール
平成2年より、主婦の立場を活かした考現学的商品研究とともに、子どもを取り巻く危険や環境に関する研究に携わる。「抗菌防臭靴下についての研究」「子ども用サバイバルスーツの提案」「校内履きを見直す」などの研究で、商品科学研究所他より多数受賞。
平成11年より、「親子で生きる力を養う」ためのサイト「子どもの危険回避研究所」を主宰・運営し、子どもに関わる事故・犯罪・暴力・健康・環境などの情報を提供し、生活安全教育の普及をライフワークとしている。近著「犯罪の危険から子どもを守る!」(学研)など著書多数。