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吉川英治さんと地域の防犯活動について考える<その1>

セコムの舟生です。

今回から2回にわたって“ピースメーカーズ・ジャパン”代表、吉川英治さんとの対談をレポートします。

吉川英治さんは、日本最初の民間自警団“明大前ピースメーカーズ”を結成。地域の安全を守る、自警団活動の第一人者のおひとりです。『ボクサー、街を守る』(日経BP社)の著者でもある吉川さんに、今回は地域の防犯活動について、お話を伺いました。

吉川英治さんインタビュー

舟生:日本初の民間自警団“明大前ピースメーカーズ”を結成するきっかけは、何だったのでしょうか?

吉川さん:私がトレーナーをしている「大川ボクシングジム」では《人の道》を教えているのですが、街の道を歩くとマナーがひどくなっていてこれではいけないと思って活動の場を道場の外に広げました。
後で知ったのですが私の地元、世田谷区松原地区は、ひったくりと空き巣のワースト1位の地区だったそうです。地元の小学校の付近でも痴漢が多発しているという情報もお母さん方から入ってきて、社会のマナーや治安が悪化していくのを黙って見ていられなかったんです。
年に10回位、海外出張をしますが、世界規模で《人の道》の低下が感じられ、コミュニティから始めた動きが世界と連携していければと願い、ひとりで活動を始めました。
それからだんだんと周囲に「防犯パトロールを一緒にやらないか?」と声をかけていって、2001年6月に“明大前ピースメーカーズ”を発足したわけです。

舟生:おひとりでパトロールをしていたこともあったのですか?

吉川さん:見て見ぬふりができないんですよ。コンビニの前で学生がたむろしていることがありますよね。集団で地べたに座って平気で物を食べ、ゴミをそこに捨てる。これは、いけないことです。私はただ「いけないことは、いけない」とストレートに言っています。

舟生:でも、ひとりで注意するのは勇気が必要ですよね。私も電車などでマナーの悪い人を見たときに、「注意するべきだ!」とは思うのですが、なかなかその勇気がでないんです。

吉川英治さんインタビュー吉川さん:そうかもしれませんね。でも、そこが世の中の間違っているところなんです。傍観者が多すぎるんですよ。マナーの悪い人を見たときに、だれもが「注意をしたい!」と感じているはずなんです。ところが注意をしない。そのなかで勇気のあるひとりが注意をしたとすると、ほかの人たちは、全部その人に任せてしまって何もしないんです。それでは駄目なんですよ。

舟生:周囲のみんなが声をかければ、言われた人もさすがに黙って聞くしかないはずですね。

吉川さん:その通りです。それから気をつけたい点は“人を注意するなら、まずは自分から”ということです。マナーを守っていない人が他人を注意するというのは、おかしい話ですよね。“街の治安が悪くなってきた”と感じたら、まず自分はどうなのかを考えてみるといいですよ。“ゴミ出しのマナーを守っているか”“路上駐輪をしていないか”“電車の中で、お年寄りに席を譲っているか”とか。そうやって、一人ひとりが自分の行動に気をつけるだけで、街の環境だって変わってくると思います。

舟生:地域の男子高校生の間で、吉川さんは“怖いおじさん”と評判のようですね。なんでも、30~40人もいる生徒たちに、たったひとりで注意をしたそうで…。

吉川英治さんインタビュー吉川さん:はい。でも「悪いことは悪い」からきちんと注意しなければなりません。それが大人の責任だと思うんです。大勢の生徒たちを相手に、道端で説教をする私に、ちょうど通りかかったお年寄りの方が「よく言ってくれた。気持ちがすーっとしたよ」と言ってくれたんです。それが自主的にパトロールを始めようと思った動機です。

舟生:“明大前ピースメーカーズ”の活動を紹介していただけますか?

吉川さん:登下校時に、通学路の安全を図るためのパトロールをしています。また、夜は2~3名ずつのチームが、数組に分かれて地域全体のパトロールをしています。

舟生:日中、登下校時のパトロールも男の人がおこなっているんですか?

吉川さん:日中は、地域のお母さん方が中心ですね。夜間は商店街のお店の人や学生、会社員、空手道場関係者など、さまざまです。

舟生:明大前駅改札口を出て、すぐのところにピースメーカーズボックスがありますね。

吉川英治さんインタビュー吉川さん:今年始めに明大前駅周辺に交番ができましたが、以前は交番がなかったんです。2002年4月からピースメーカーズの活動拠点として、駅前広場にピースメーカーズボックスが設置されました。道案内や近隣からの要請を受けて出動することもあります。

舟生:常駐している方もいるんですか?

吉川さん:日中は、専従職員が1名常駐しています。夕方以降は、その日のパトロールをおこなう隊員が、22時過ぎまで対応をしています。

舟生:近隣の方から“民間交番”と親しまれているようですね。

吉川さん:ご近所の方たちなど知ってる人たちが多いですから、入りやすい雰囲気もあるのかな。今は、正式な交番もできましたが、ピースメーカーズボックスのほうが駅に近いこともあって、「道がわからない…」など、よく人が訪れますよ。

舟生:“明大前ピースメーカーズ”を設立して、防犯の成果はありましたか?

吉川さん:パトロール中の人命救助が2件ありました。ぼやの初期消火もあります。松原小学校近くでは、パトロール開始前は10日に1件の割合で痴漢の出没報告があったそうですが、活動開始後は件数が激減し、2002年6月を最後に発生情報がなくなったと聞いています。これらの活動が評価されて、2002年6月に北沢警察署長より、地域安全活動全般に関して表彰を受けたんです。

舟生:“明大前ピースメーカーズ”の活動は、周囲にも影響を与えたのではないですか?

吉川さん:まず登下校時のパトロールを始めて、子供たちがあいさつをしてくれるようになりましたね。それから、街の人も。地域のなかで、あいさつの輪が広がりました。それまで、地域のことに無関心だった人が、だんだん地域に関心を持ってきて…これは、防犯の点で大切なことですよね。


今回は、ここまでです。この続きは次回レポートしたいと思います。お楽しみに。


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