防災について考えよう - ニューヨークの災害対策(前編) -
セコムの舟生です。
5年前の9月11日、アメリカで同時多発テロ事件が発生しました。月日の経つのは早いもので、もう5年が経ちます。あの事件からほどなくして私の長女はこの世に生をうけました。子供たちの未来のために、あのような悲惨な事件が二度と起こらないように、心から願うばかりです。
9月は、防災の日(9月1日)もあり、全国各地の学校や自治体で防災訓練が行われます。みなさんの地域ではいかがでしょうか? 防災意識が高まる時期ですが、一時的な高まりで終わらないよう、常に防災を心掛けなければいけませんね。
今回は、セコム株式会社 IS研究所の甘利康文氏が、ニューヨークの災害対策について、レポートします。ニューヨークの事例を参考にしながら、身近な防災意識を高めていきましょう。
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みなさん、こんにちは。セコムの甘利です。
米国が未曾有のハリケーン「カトリーナ」に襲われてから1年が経過しました。今回は、舟生にかわって私がニューヨークの災害対策などをレポートしたいと思います。
ニューヨーク市で災害対策など、緊急事態の対応を担当している部署は、緊急管理局(OEM:Office of Emergency Management)です。ニューヨーク市のOEMでは、緊急事態への「対応準備」を具体的に呼びかけるため『READY NEW YORK』(RNY)というプログラムを展開し、RNYパンフレット『家庭の緊急事態に備えるためのガイド』を、市民に配布しています。このパンフレットですが、市民の立場で、アクションプラン的に書かれているので非常に参考になります。また、人種のルツボというニューヨーク市の特質から、日本語も含めた各国語で提供されています。災害時、言葉が分からない状況では、その不安は何倍にも増幅されます。日本でも見習うべきところかと思います。是非一度見てみて下さい(但し、あくまでもNYCの市民向けのものであり、地震など日本では当然もっと考えなくてはいけない項目が手薄だったり、当てはまりにくい項目もあったりしますので、その点注意して見て下さい)。
RNYでは、災害への“対応準備”として、「頭に入れておくこと」「持っていくもの」「家庭で準備をしておくもの」という、3つの観点から市民に対して具体的な呼びかけを行っています。
◆頭に入れておくこと
まず、家庭における緊急事態の対応訓練の実施を具体的に呼びかけています。自宅で避難訓練をやったという話は、日本では聞きませんね。お子さんがひとり、家で留守番をしている時に、災害が発生するかもしれません。家族のひとり一人が落ち着いて行動できるように、災害時に対する緊急対応の意識をあわせて、家周辺の避難ルートの再確認をしておくことを勧めています。
またRNYでは、災害発生時に家族が合流する場所を2カ所、決めておくことをアドバイスしています。1カ所は家のすぐ近く。もう1カ所は、家の近所の建物(たとえば図書館や教会)などです。
日本には、広域避難所があります。また災害用伝言ダイヤル「171」もあるので、市内通話が不通になった場合の連絡手段として上手に活用したいところです。近所の小学校や公民館が地域の避難所であるということは知っていても、避難先の電話番号までは、知らない人が多いのではないでしょうか? ぜひ確認をして、電話番号を控えておきましょう。
◆持っていくもの
RNYでは、非常用持ち出し袋(Go Bag)の準備を、強く呼びかけています。日本の非常用持ち出し袋といえば両手が使えるリュックの形をしているのが普通ですが、RNYでは、それに加えて、車輪付きスーツケースを勧めています。車輪が付いているので、中身が重くなった場合でも、持ち出しやすいという優れた点があります。持ち出すものが多くて、重くなってしまう場合は、車輪付きのスーツケースを利用してもいいかもしれませんね。
アメリカでは、家や車のスペアキーをGo Bagの中に入れておきます。日本では、あまり聞きませんね。本当に避難しなければならなくなったとき、「このバッグ1つを持っていけばOK!」というように準備をしているのが、RNYのGo Bagなのです。
Go Bagには、ほかにもバッテリーや手回しで充電できるタイプの携帯電話充電用ツールは用意しておくべきです。携帯電話は、今や電話の域を超え、手軽に持ち歩ける“情報収集・蓄積ツール”として災害時にも活躍します。ラジオやテレビ、電子マネーとして使うことができるものもあり、いざというときに役立つはずです。
「連絡先一覧」や「家族の写真」も、忘れずに避難袋に入れておきましょう。連絡先一覧は、水に濡れても大丈夫なようにパウチ加工をしておくと安心です。また、家族の写真は、消息を訪ねるときに手元にあると、話がスムーズです。
災害や避難生活は、子供に大きな不安とストレスを与えます。子供たちに、少しでも心の余裕を与えるためにも、子供用のゲームや小さなおもちゃを、避難袋に詰めておきましょう。
これを機会に、家の緊急避難袋の総点検をしてみてはいかがでしょうか?
◆家庭に準備しておくもの
RNYでは、最低でも3日間は、自力で生き延びることができるよう自宅に必需品を十分蓄えることをアドバイスしています。ポイントは、家族に“緊急時の備蓄があること”を知らせておくこと。そして、すぐ手が届く所に“1カ所にまとめて置いておく”ことです。日本でも消防庁がサイトで、非常備蓄品としてひとりあたり3日分の備蓄を呼びかけています。「備えあれば憂いなし」これは洋の東西を問わず言える真実です。
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